1)マインドフルネスってそもそも何?
【1】いまこの瞬間に
マインドフルネスの権威である、マサチューセッツ大学医学校名誉教授のジョン・カバット・ジン氏によると、マインドフルネスは下記のように定義されます。
Mindfulness is the awareness that arises through paying attention on purpose, in the
present moment, non-judgmentally to the unfolding of experience moment by moment.
訳すと、「今この瞬間に、偏った価値判断を加えることなく、意図的に、能動的な注意を向けること、そしてそこから得られる気づき」となります。マインドフルネスの考え方としては、「今の瞬間」に対して意識を向けるというのが一番わかりや
すいでしょうか。
過去への後悔や、将来への不安など多くのストレスを抱え苦しんでいる人が多い中で、マインドフルネスが実践できている人は、「今の瞬間」に意識を向けることで、ストレスの軽減や感情のコントロールができるようになり、高いパフォーマンスを発揮することができます。
【2】医療・企業でも取り入れられている
マインドフルネスの考え方を実践したマインドフルネス瞑想(仏教瞑想より宗教的要素を除いた瞑想法)は、ジョン・カバット・ジン氏によって開発され、医療現場でも患者のストレスの軽減や鬱病の再発防止の効果が実証されています。
ストレスを軽減し、仕事の生産性を上げる効果があるとしてグーグルやマイクロソフトなどでマインドフルネスの考え方を実践するプログラムが実践されています。グーグル社内で開発された、マインドフルネスのプログラムは「Search Inside Yourself(SIY)」は日本でも認定講師によって多くの方に紹介されています。
2)マインドフルネスに期待できる5種類のメリット
【1】メリット1:ストレスの軽減
マインドフルネスがストレスの軽減に効果があるというのは、多くの研究で実証されています。
MRI(磁気共鳴画像診断装置)を使った研究では、マインドフルネスを続けた人は、左海馬や側頭頭頂接合部において灰白質の密度が増加。左海馬は感情コントロールに関係し、うつやPTSD(心的外傷後ストレス障害)の人では小さくなっていることが知られている部位であり、側頭頭頂接合部は思いやりや共感に関わっている部位です。
2013年には、209の研究、延べ被験者数1万2000人以上のデータを対象にメタ分析が行われています。
結果、マインドフルネスは心理的な問題、特に不安、うつ、ストレスの減少に効果があるといってよいという研究報告も出ています。
【2】メリット2:感情のコントロール
マインドフルネスの考えを実践し、今の自分の状態を客観的に見つめることで、感情をコントロールする習慣が身につきます。ある実験では、あらゆる依存症患者に対して、マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)のプログラムに3回参加させた結果「ドラッグやアルコールへの依存が弱まり、精神状態も大きく改善した」という報告も出ています。
【3】メリット3:集中力の向上
効果として実感値が高いのは、集中力の向上です。マインドフルネスの考え方である「今の瞬間に意識を集中させる」ことが、習慣として身につくことにより、今やるべきことに集中して、他の事に気をとられずに物事を進めることができるようになります。
【4】 メリット4:創造力の向上
マインドフルネスの考え方が習慣化することにより、現状を俯瞰的に見る力が養われます。また、ストレスの軽減、感情のコントロールができることで、心に余裕ができ、周りを見渡して、広く深く考えることができるので、創造的な考えも生まれやすくなります。
【5】メリット5:睡眠の質の向上
人間の脳はモンキーマインドと言われ、脳の中では、いろんな考えが常に駆け巡っています。睡眠の質を上げるためには、考え事や悩み事などを排除し、脳を休める必要があります。マインドフルネスが実践できている人は、今の瞬間の眠ることに集中することができるので、リラックスした状態で質の高い睡眠をとることができます。
3)マインドフルネスの実践方法
マインドフルネスの実践方法にもいくつかあります。その中の代表的なものを3つ紹介します。今、自分が行っていることに意識を向けるためのアウトプット方法と考えてください。
【1】マインドフルネス瞑想
マインドフルネス瞑想は、自身の呼吸に意識を向ける方法です。マインドフルネスの中ではもっともポピュラーな方法で、仏教の瞑想から宗教的な要素を取り除いた方法です。やり方は非常に簡単で、リラックスできる状態をつくり、自身の呼吸に意識を向けるだけでOK。呼吸に意識を向ける際には、余計なことは考えずに呼吸することに集中することが重要です。詳しいやり方は、この後5つのステップでご説明します。
【2】ジャーナリング
ジャーナリングとは、思いつくことを思いつくままに、5分間~10分間、ひたすらノートや紙に書き出す方法です。思いつくことを思いつくままに書き記すことで、自分の考えや状況、感情に意識を向けることができます。また、書き出すことで、自身の中の感情や考えが洗い出され、心が穏やかになる。抱えていた負の感情や考え、自分自身で思ってもいない気持ちが出てくることで心がスッキリするなど、さまざまな効果が期待できます。
ポイントとしては、時間を決めて、その時間内は、ひたすら書き続けることです。書いた内容をあとで振り返る必要はないので、体裁や書き方なども気にする必要はありません。心の中のもう一人の自分と会話をするようなイメージで時間いっぱい書き出してみましょう。
何から書き出したらよいかと迷う場合は、最初だけテーマを持って進めてもいいかもしれません。たとえば、「今、気になることは・・・」「こうなったらいいなと思うことは」など、書き出しやすいテーマで書き始めてみてください。
【3】マインドフル・イーティング
マインドフル・イーティングとは、意識的に食べることに向き合う方法です。食べることに意識を向けることで、食べるスピードや食べる量に意識を向けることで、食習慣が改善されること。さらには食べる行為に意識を向けて、料理を味わうことで幸福感を得ることができます。
(1)五感を意識して食べる
・視覚
その料理は、どのような色合いなのか?どのような素材が使われているのか?どのような器に盛られているのか?今から自分が食べる料理をしっかりと見て、食べてみましょう。
・触覚
料理を口に運び、その料理の舌触りや固さ、料理の温度などを楽しみましょう。
・聴覚
食べ物を噛んだときのサクッとした音、カリカリした音、噛んだときの食べ物の音などを意識してみましょう。
・嗅覚
焼いた香ばしい香りや、スパイスの香り、果物のフレッシュな香りなど料理の香りを意識して、食事を楽しみましょう。
・味覚
実際に食べてみて、料理の味付け、食材ごとの味、のどごしなど、今食べている料理に意識を向けて食べてみましょう。
(2)食べる行為を客観的に見つめる
自分の食べるという行為を、俯瞰的に見ながら食事をします。食べるスピードは早いのか遅いのか、何回くらい噛んでいるのか、料理が口の中から食道、胃へと流れていく様子。食べる行為に意識を向けて食事を進めていきます。
4)初心者必見!マインドフルネス瞑想の正しいやり方5つのSTEP
マインドフルネスをするために特別用意するものはありません。マインドフルネス瞑想は、気難しく考えず、自身の呼吸に意識を向けることです。最初は雑念に意識がいってしまいますが、下記の5つのステップで実践してみましょう。
【1】STEP 1:姿勢を正して座る
座る際には、背すじをのばすことと胸を開くことを意識してください。背中が丸まっていたり、身体がひねられていると深い呼吸ができないので、深く呼吸ができるよい姿勢を心がけてください。
※椅子に座る場合は浅く腰掛け背もたれには寄りかからない、あぐらの場合は、座布団にお尻の部分だけのせるとやりやすいです。
【2】STEP 2:目を瞑る
目を軽く閉じてください。きつく瞑ろうとするとリラックスできないので軽く閉じてください。また目を閉じると、雑念に意識がいってしまうということであれば半目を開いた状態で1メートル先くらいの床に目を向けてみてください。
【3】STEP 3:呼吸を意識する
息を鼻から吸い込み、鼻から吐きます。空気が鼻から入ってきて、身体の中に拡がり、鼻から出て行くことを意識してください。空気を入れたときの胸やお腹の動きなども意識してみてください。実際に手を当てて確認しても構いません。
【4】STEP 4:雑念を排除する
呼吸に意識を集中していても、仕事やプライベートさまざまなことが頭をよぎることがあると思います。雑念が浮かんだことに気づいた際には、その雑念をラベリングして意識の片隅に置きます。例えば、部下の仕事の進捗に関する内容が浮かんだら、部下のこととラベリングをして置き、再び呼吸を意識してください。
【5】STEP 5:STEP 3・4を繰り返す
呼吸を意識しながらも、さまざまな雑念が出てくると思いますが、根気強く呼吸に意識を戻して続けてください。
5)実践するうえでの3つのポイントとは?
【1】今の状況を客観的に観察する
呼吸をする際に、自分を客観的に見つめることが集中しやすくなります。部屋の中の空気流れや、自分の位置、自分の中の気の流れなどを客観的に意識をすることで高い集中力を持って、瞑想を続けることができます。
【2】正しい姿勢(効果を高める)
姿勢が悪いと呼吸が浅くなります。座るときに身体を支える骨盤を意識して背すじを伸ばすことで深い呼吸ができるようになるので、呼吸に集中しやすく、効果も高まります。
【3】実践する時間を決める(習慣にする)
朝食後に5分間、就寝前に5分間など、生活の中で実践する時間を決めることが継続のコツです。また、時間が空いたら、隙間時間の5分間でなど、実践する時間を設定しておくのもよい方法です。
まとめ
【1】マインドフルネスは「今の瞬間」を意識する考え方
【2】ストレス軽減などの効果は実証されている
【3】マインドフルネス瞑想は5つのステップで実践できる
【4】1日3分でもいいので継続して実践することで効果が出てくる
アクティビスタでは、スタンフォード大学でマインドフルネスを研究され、スタンフォード大学のみならず、東京大学でも教鞭を取られていた「スティーヴン・マーフィ重松」先生のセミナーを企画・運営をお手伝いしています。癒しだけでなく、多くのことを気づかせてくれるマインドフルネス。興味や関心がある方、またマインドフルネス講演に関するご質問など、ぜひご連絡ください。
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